知的財産(特許,著作権,商標)と競争法 判例法律情報 石下雅樹法律・特許事務所

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椅子デザインの模倣と応用美術(2)

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1 今回の判例 椅子デザインの模倣と応用美術(2)
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東京地裁 平成22年11月18日判決

 本件は、我が国には昭和52年から輸入されていた特徴のある椅子(X社製品)を製造・販売・輸出していたX社と他の1社が、この椅子を模倣した製品を販売しているとして、Y社に対しY社製品の製造販売の差止と損害賠償を請求したものです。

 X社の主張は、主に、(1)Y社によるX社製品の著作権侵害の主張、(2)周知な商品等表示であるX社製品の形態を使用する不正競争行為に該当するという主張、でした。

 以前の記事では、(1)について取り上げましたので、本稿では(2)について取り上げます。


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2 裁判所の判断
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(1)原告製品の形態の周知性については、

 ● X社製品の特徴的な形態
 ● 販売数量の経年的増加
 ● 新聞や雑誌への広告等の掲載実績
 ● 宣伝広告記事やパンフレットへのX社の表示の実績

などを考慮し、X社製品の形態は、X社の「商品等表示」として、遅くとも平成17年10月31日までには周知なものになっていた。


(2)X社製品の形態とY社製品は、両製品の共通点を総合判断すれば、類似する。


(3)混同のおそれの有無については、両製品の用途(子供用のいす)、主な需要者(小さな子供を持つ親たち)、価格帯の共通性などから、Y社製品に接した需要者が、Y社製品がX社製品(またはX社の関連会社の製品)であると誤信するおそれがある。

(4)以上から、Y社製品の製造販売は、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当する。


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3 解説
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(1)商品デザインと周知表示混同惹起行為

 意匠登録等されていない製品のデザインについても、法的に保護される(他者に対し類似のデザインの製品の製造販売を禁止できる)場合があります。

 この点、不正競争防止法2条1項1号は、「他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為」を不正競争行為として禁止しています。

 具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

(a)商品表示性
   商品の形態が特徴的で、商品の印(しるし)として機能する
  必要があります

(b)周知性
   商品の形態が需要者の間で広く認識されている必要がありま
  す。

(c)類似性
   商品形態が、全体として類似する必要があります。

(d)混同のおそれ
   需要者が両者の商品の間で混同を起こすおそれがあることが
  必要です。


 (a)(b)についていえば、商品の形態が特徴的で、かつ需要者(この商品の取引に関わる人々)の間で周知となっており、この特徴的な形態を見れば、特定の事業者の商品であると認識される程度に知られている場合である必要があります。実際に、商品形態の保護が認められた例としては、ルービックキューブ、チョロキュー、iMacなどがあります。



(2) 周知表示混同惹起行為による商品形態の保護と証拠の収集保存

 本マガジン第65号で述べたとおり、商品形態の保護のためには、可能なら意匠登録することが望ましいと考えられます。もっとも、意匠登録にも一定の要件がありますから必ずしも登録ができないようなケースもあるでしょう。

 この場合、不正競争防止法による商品形態の保護も検討しなければならない場面が生じるかもしれません。ここで重要となってくる要素の一つは「周知性」の立証です。つまり、訴訟においては、ある商品形態が需要者の間で周知(知られている)ことを立証しなければ成りませんが、そのためには、普段の証拠の収集と保存が大きくものをいうことがあります。

 自社の当該製品について、周知性についての主な立証手段としては以下のようなものがあります。

 ● 販売期間・販売地域の資料
 ● 売上高の資料
 ● 宣伝広告費の金額
 ● 市場シェアの資料
 ● 販売店数、製品流通量
 ● 新聞・雑誌・書籍・テレビ・ラジオにおける当該製品が取り
  上げられた記事(多ければ多いほどよい)
 ● 宣伝・広告の地域・量・内容に関する資料(多ければ多いほ
  どよい)
 ● 需要者に対するアンケート調査

 以上のような資料は、紛争が生じてから収集できるものもあるかもしれませんが、そうではないものもあるでしょう。そのため、いざ紛争が生じたときに立証手段に窮し、受けられるべき保護が受けられなくなる、といった事態が生じるかもしれません。

 この点、普段の業務過程で生じる資料を保存しておくことで、そのような事態をできる限り防ぎ、自社の正当な利益の保護につながることになるかもしれません。

  1. 2012/02/13(月) 08:52:25|
  2. 不正競争防止法|
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絵画の鑑定証書と著作権法上の引用

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1 今回の判例 絵画の鑑定証書と著作権法上の引用
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 知財高裁 平成22年10月13日判決

 美術品の鑑定を専門的に行うY社は、著名な画家A氏の絵画の鑑定を行い、鑑定証書を作成しました。鑑定証書の裏面には、パウチラミネート加工によって、鑑定した絵画を縮小カラーコピーしたものが付けられていました。

 これに対して、A氏の相続人であるX氏は、Y社がA氏の著作権(複製権)を侵害したとして、Y社に対する損害賠償請求訴訟を提起しました。


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2 裁判所の判断
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知財高裁は、以下のとおり判断し、X社の請求を認めませんでした。

(1)公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されている(同法32条1項)。

(2)本件で鑑定証書に絵画のコピーを添付したことは、著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において、公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内の利用であるとして、32条1項の規定する引用として許される。


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3 解説
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(1)著作権法上の「引用」

 他者の著作物を複製する場合には原則として複製権を侵害することになりますが、著作権法に定める「引用」に該当する場合には、著作権者の許諾なく、著作物を利用できます。

 一般的に、「引用」として適法となるためには、以下の要件が必要であるとされています(なお裁判例などで若干内容に差異があります)。

 ア 引用が公正な慣行に合致すること
 イ 引用が、報道、批評、研究などの引用の目的上正当な範囲
  内であること
 ウ 引用を行う必要性があること
 エ 引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること
 オ 引用部分が明確になっていること
 カ 出所の明示

 本件では、鑑定証書について、(a)その鑑定対象である絵画の特定と鑑定証書偽造防止の観点から、添付の必要性・有用性が認められる、(b)贋作の排除・著作物の価値向上・著作権者等の権利保護の観点から、著作物の鑑定のための当該著作物の複製利用は著作権法の規定する引用の目的に含まれる、(c)絵画とカラーコピーが別に流通することや、作家側が絵画の複製権から経済的利益を得る機会が失われることも考え難いことから、鑑定証書へのコピーの添付は公正な慣行に合致したものである、といった判断で、引用の要件に合致すると判断されました。


(2)ビジネス上の留意点

 著作権法上の引用の規定に基づき、他者の著作物を利用するケースは、比較的トラブルが生じやすいケースですので、十分注意が必要です。具体的には、以下のような点に留意する必要があるでしょう。

 ア 引用する必要性の存在
  自己の記述上、補足・批評、その他、他人の著作物を引用する
  必要性がなければなりません。

 イ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」
  自己の著作部分が「主」であり、引用する著作物が「従」とい
  う関係が必要です。引用する部分は必要最小限にとどめること
  が望ましいといえます。また、質的に見ても、自己の著作部分
  に実質的な内容がなく、引用部分が実質的に内容の多くを担う
  場合は「引用」とはいえません。

 ウ 引用部分の明瞭な区分
  自分の著作部分と引用する著作物が、明瞭に区分されて、引用
  部分が自分の著作物と誤認されないような体裁上の区分をする
  必要があります。

 エ 原形を保持して掲載する
  ある著作物の著作者には、著作者人格権の一つとして「同一性
  保持権」があります。したがって、当該著作物を編集・変形せ
  ず、原形を保持することが必要です。

 オ 原著者の意図に反した引用をしない
  引用する著作物の文脈を無視して、原著者の意図を曲げて引用
  するといった引用は許されません。また、著作者の名誉や声望
  を害した利用も許されません。

 カ 出所(出典)の明示
  出所を明示することが、多くの場合必要です。


 そして、以上のほか、本件で問題となったように、引用が「公正な慣行」に合致することや 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であることについては、争いになることが多く、多くの裁判事例があります。

 他者の著作物を通常の学術論文などに通常の目的・方法で引用する場合には、問題となることは少ないでしょうが、ビジネス上の目的で他者の著作物を、「引用」として許諾なしで利用しようとする場合、難しい法的判断が必要となる場合があります。この場合、弁護士などの専門家の助言を得て慎重に進めることが好ましいと思われます。
 
  1. 2012/01/06(金) 18:57:46|
  2. 著作権等|
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椅子デザインの模倣と応用美術(1)

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1 今回の判例 椅子デザインの模倣と応用美術(1)
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東京地裁 平成22年11月18日判決

  本件は、我が国には昭和52年から輸入されていた特徴のある椅子(X社製品)を製造・販売・輸出していたX社と他の1社が、この椅子を模倣した製品を販売しているとして、Y社に対しY社製品の製造販売の差止と損害賠償を請求したものです。


 X社の主張は、主に、(1)Y社によるX社製品の著作権侵害の主張、(2)周知な商品等表示であるX社製品の形態を使用する不正競争行為に該当するという主張、でした。

 本稿では(1)について取り上げ、後日の機会に(2)について取り上げたいと思います。


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2 裁判所の判断
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(1)意匠法等の産業財産権制度との関係から、著作権法により美術の著作物として保護されるのは、純粋美術の領域に属するものや美術工芸品である。

(2)実用に供され、あるいは産業上利用されることが予定されているもの(いわゆる応用美術)は、それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り、著作権法による保護の対象になるという。

(3)X社製品のデザインは、椅子のデザインであって、実用品のデザインであることは明らかであり、その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならない。


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3 解説
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 本件の裁判所が述べるとおり、工業製品等についての応用美術については、純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に著作権権法の保護が受けられる、というのが多くの裁判例の立場です(ただし、裁判例によって微妙に表現の仕方が異なります。)。したがって、応用美術について著作権法上の保護が与えられるケースは、現実には非常に限定されています。

 この点、少なからぬ方々は、自社の製品はデザインが優れているので著作権があり、著作権法で保護される、したがって、手間と費用のかかる意匠出願は不要、と考えているかもしれません。しかし、そうだとすれば現在の著作権法に対する理解としては不正確といえるでしょう。

 自社にとって重要な製品であって、画期的なデザインを有するものについては、本来の工業製品のデザインを保護する制度である意匠登録による保護を活用すべきではないかと考えられます。

 ただし、一定の場合には、不正競争防止法の活用による保護の余地はあります。この点は後に取り上げる予定です。

  1. 2011/12/07(水) 01:19:14|
  2. 著作権等|
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病院経営管理に関する書籍と職務著作

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1 今回の判例 病院経営管理に関する書籍と職務著作
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東京地裁平成22年9月30日判決

 医療・福祉経営コンサル会社X社に就職し、取締役になったY氏が、出版社から病院の経営管理に関する書籍の執筆の依頼を受けました。

 Y氏は、部下である従業員らと分担して執筆を担当しました。Y氏がX社を退職後、当該書籍Aが出版されました。

 これに対し、X社が、書籍AがX社の職務上作成されたものであるとして、また、従業員らが執筆した部分の著作物の著作権がX社に帰属するとして、Y氏に対し、書籍Aの出版、販売及び頒布の差止めと廃棄、損害賠償を求めました。


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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、X社の請求を認めませんでした。

(1)書籍Aの執筆は、Y氏個人に対して依頼されたものであり、各執筆担当従業員がY氏からの個人的な依頼に基づき執筆を行ったものであると認定し、書籍Aの執筆過程で作成された著作物は、X社の発意に基づき職務上作成されたものであるということはできない。

(2)したがって、書籍Aに含まれる著作物はX社の職務著作とはいえず、X社に著作権は帰属しない。


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3 解説
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(1)職務著作とは

 通常、ある著作物の著作者になるのは、その著作物について現実に創作活動を行った個人です。

 しかし、会社(法人)等の職員がその職務上著作物を創作する場合があります(例:会社の従業員が製品マニュアルを作成する。新聞記者が新聞記事を執筆するなど)。このような場合に、会社にその著作権が帰属させないと不都合なことが多くなります。

 そこで、著作権法は、一定の要件を全て満たす場合、会社などの法人が著作者になる旨を定めています(著作権法15条)。


(2)職務著作の要件

 著作権法が定める一定の要件は以下のものです。

 a その著作物が、当該法人や雇用者の発意に基づくものである
  こと

 b 法人等の業務に従事する者が、職務上創作したこと

 c 公表するときには、法人等の名義で公表されること

 d 契約や就業規則に別段の定め(例えば従業員を著作者とする
  定め等)がないこと  

 以上のとおり、職務著作が認められる要件は少なくありませんので、自社で何かの著作物を作成する場合、上記要件を意識した運用が必要となってきます。

 例えば、前記bの要件についていえば、使用者と作成者とのあいだに雇用関係があること、または、実質的にみて、法人等の内部において従業者として従事していると認められる場合があることをいいます。それで、雇用関係のない外部の者が請負契約により著作物を作成した場合には、職務著作は適用されません。したがって、請負契約等で第三者に著作物の作成を依頼する場合、契約書に著作権の移転を明示する必要があるわけです。

 なお、職務著作の要件に関する個々の論点は、今後都度取り上げていきたいと思います。

  1. 2011/12/01(木) 03:13:43|
  2. 著作権等|
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ペ・ヨンジュン事件とパブリシティ権

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1 今回の判例 ペ・ヨンジュン事件とパブリシティ権
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東京地裁平成22年10月21日判決

 本件は、著名な韓国人俳優であるX氏が、雑誌Aの出版社Y社等に対し、X氏の多数の写真などが掲載された雑誌Aを出版・販売した行為が、X氏の「パブリシティ権」を侵害するものであると主張して、損害賠償を求めた事例です。


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2 裁判所の判断
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裁判所は、以下のとおり判断し、X氏の損害賠償請求を認めました。

(1)雑誌Aの構成は、X氏の来日の際の活動を紹介を中心とし、そのすべてをX氏の氏名、写真、関連記事、関連広告が占めている。

(2)雑誌Aのそのほとんどのページに、合計74枚のX氏の写真が掲載されている。

(3)表表紙と裏表紙には、X氏の写真が全面に使用され、表表紙にはX氏の氏名が大きく記載。

(4)多くのページの全面にX氏の写真が使用され、記事部分があるページもごくわずかか、数分の1である。

(5)X氏の氏名・肖像は強い顧客吸引力を有すること、雑誌Aが上質の光沢紙を使用したカラーグラビア印刷の雑誌であることなどを併せ考えると、雑誌Aのように表紙及び本文の大部分でX氏の顔や上半身等の写真をページの全面又はほぼ全面にわたって掲載するような態様でのX氏の写真の使用は、X氏の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするものと認められ、X氏のパブリシティ権を侵害する。

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3 解説
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(1)著名人とパブリシティ権

 商品・サービスなどの宣伝や、企業のイメージキャラクターに著名人が起用されるケースが世の中に多く見られます。それは、有名人の肖像や名前には人々の注意を引く力があるからであり、これは「顧客吸引力」と呼ばれます。

 そして、著名人の氏名や肖像が持つ顧客吸引力が、経済的利益又は価値を持つことから、自己の氏名・肖像から生じる経済的利益・価値を自己が排他的に支配し、無断で第三者に使わせない権利が発生することになります。この権利をパブリシティ権といいます。

 この点、第三者が、ある著名人の肖像や名前を自己の商品やサービスに使用することが、当該著名人の許諾を要するものなのか(つまり、許諾なしでの使用が違法となるか)については、多くの裁判例の蓄積があります。

 この点、裁判例の多くは、当該著名人の氏名や肖像の使用が、当該著名人の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的としているものか否かで判断しています。


(2)パブリシティ権とビジネス上の留意点

 もっとも、ある商品に著名人の氏名や肖像を使用しつつ、「当該著名人の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的としている」とはいえないと判断される余地のあるケースは、ある著名人について扱った出版物といったものに限られるように思われます。

 そして、著名人の写真や氏名の使用が、あくまでも商品やビジネスの主たる目的に必要な範囲の副次的・付随的な用途である必要もあり、著名人の写真や氏名の顧客吸引力を利用することが「もっぱら」とまではいえなくとも、主要な目的・用途の一つと考えられるような使用は避けるべきでしょうし、写真についていえば、写真自体が鑑賞の対象になるような写真の使い方も避けるべきでしょう。

 したがって、著名人の氏名や肖像の使用においては、仮に争いになって訴訟で勝訴する可能性のある微妙なケースであっても、当該著名人の許諾を受けることを原則とすべきと考えられます。

  1. 2011/11/14(月) 18:38:29|
  2. パブリシティ権、肖像権、プライバシー|
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